今日は、特にどの書籍にも(たぶん)書かれていないことをご紹介したいと思います。
いわゆる「300日問題」の具体的な一解決方法についてです。
〈原則〉
離婚後300日以内に子が出生した場合には、元夫の子であると法律上推定されてしまい(民法772条)、出生届の父親欄に元夫の氏名を記載しなければ、受理をしてもらえません。
つまり、真実は子が元夫の子でないにも関わらず、一旦元夫の子として扱われることになります。
子が元夫の子でない場合には、出生(元夫が出生を知って)から1年以内に裁判所に元夫の側から「嫡出否認の訴え」を起こしてもらいます。
この決定が確定して初めて、戸籍の訂正ができることになります。
この裁判は、子が出生してからでないと申立てをすることができません。
現在、東京家庭裁判所では、調停の申立をしてから初回の期日まで2ヶ月程度かかります(※執筆現在)。
しかし、戸籍法49条1項では、子の出生届は出生から14日以内に提出することとされていますので、やはり一旦出生届に元夫の氏名を記載して元夫の戸籍に子を入れるということになります。
どの本や記事を見ても、区役所で相談をしても、そのように記載されていますし、実際にそのような法律になっています。
この不都合が原因となって、子の出生届が提出できずにいる、いわゆる「無戸籍問題」が社会問題の一つになっています。
(※懐胎時から遡って14日より前に離婚が成立している場合には、医師による証明をもって嫡出推定を覆す方法があります。詳しくはこちらhttps://www.moj.go.jp/MINJI/minji137.htmlをご覧ください。)。
〈解決方法〉
様々な理由から結論として離婚をすると決めた元夫の戸籍に、真実と異なる記載がなされることは、なかなか受け入れられるものではないと思います。
そこで、家庭裁判所の手続きを使って、この状況を少しでも打開しようと考え、実際に行いました。
具体的な方法は、以下のとおりです。
①家庭裁判所に「離婚後紛争調停」の申立を行う
※元夫側から行うのがベター、妊娠7ヶ月ころまでに申立て
↓
②この調停の期日、又は期日に先立って、事実関係を家庭裁判所に書面で説明
↓
③予定日より少しあとの日程に調停期日を設定しておく
↓
④出生次第、嫡出否認の調停を申立
※元夫からの申立てになります。
↓
⑤先に決めていた期日と同時に期日を行う
↓
⑥即日審判移行
※即日移行するためには、事前に綿密に準備を行っておく必要があります。
↓
⑦後日DNA鑑定など
↓
⑧審判(決定)、確定証明の交付
↓
⑨出生届(父親欄空欄、あるいは真実の父親を記載)の提出
この流れで、やっと真実を反映した戸籍の届け出ができます。
出生後14日以内の届け出はできませんし、戸籍法上は嫡出否認の訴えを行っている場合であっても出生届の提出は義務です(戸籍法53条)が、事前に自治体に相談し、決定後速やかに届け出ることによって、特段問題になりません。
〈注意点〉
・戸籍の記載
この方法によっても、戸籍に嫡出否認により父性が否認されたことの記載はなされますし、元夫の協力があることが前提になりますので、その点はご承知おきください。
・住民登録
出生後すぐに行う必要があります。
出生後の1ヶ月健診の受診票の発行は住民登録に紐付いていますし、健康保険証の発行も住民登録が前提です。
ただ、原則として出生届を提出せずに住民登録だけ行うということは大変イレギュラーです。住基法の改正により住民登録だけ行うことが可能になったのがここ最近のことなので、役所でも取り扱いに慣れていません。
役所への説明も含め、事前に準備しておく必要があります。
現在、出生時に再婚をしていた場合には、300日以内であっても元夫の父性推定をしないという法案が成立間近です。
少しずつこの問題について解決をする動きが出てきていますが、現段階ではまだ何ら解決されていない状態です。
〈おわりに〉
以上ご紹介したいずれの手続きにおいても、綿密な準備が必要になりますし、この分野に詳しい弁護士の助けが必須になります。
離婚から300日以内に元夫でない男性との子を出産する予定の方は、ぜひ早めに弁護士に相談をしてみてください。
(担当:萩生田)
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