【判例コラム】相続税対策の養子縁組の有効性
相続にあたり相続財産が基礎控除額を上回る場合、相続税が課せられますが、基礎控除額の計算式をご存知でしょうか?
基礎控除額の計算式は下記通りです。
基礎控除額・・・3,000万円+600万円×法定相続人の数
つまり、法定相続人の数が多ければ、相続税が減額となることがあり得ます。
では、専ら相続税の節税のために養子縁組をすることは有効なのでしょうか。
【事例】
被相続人は、税理士から孫(長男の子)を養子にした場合、「相続税の節税効果がある」旨の説明を受け、当該孫と養子縁組をしたが、被相続人の死後、長女と次女が本件養子縁組は縁組をする意思を欠くものであると主張し、その無効確認を求めた事案。
【民法802条1号】(縁組の無効)
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
最高裁は、「養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」と述べたうえ、養子縁組の無効を認めませんでした。
養子縁組により発生しうる効力を期待することと縁組をする意思とが併存し得るのは当然だと思いますが、節税目的のみであり、養子縁組としての実態が客観的にも存在しない場合には、やはりそのような養子縁組は無効と判断され得ると思います。
また、税務の観点からの注意点は2点あります。
① 節税のためだけの養子縁組は税務上認められないケースがあること
「相続税の負担を不当に軽減させる結果となると認められる場合は、税務署長の判断で養子を算入せずに税額を計算することができる」という定めが相続税法 63条にあるため、節税のためだけと認められると否認されてしまう可能があります。
② 節税効果に限界があること
相続税法上、養子縁組をしたとしても基礎控除を計算するうえでカウントすることができる人数が定められています。
実子がいる場合・・・・一人まで
実子がいない場合・・・二人まで
そのため、やたら養子を増やしたからっといて無制限に節税効果が得られるかというとそうではないので注意が必要です。
養子縁組は、節税のために養子縁組を行うとしても、本件のように将来相続人同士が揉める可能性もあれば、節税効果が得られない場合もあります。できるだけ紛争を避けるべく事前に法律の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
(担当:萩生田・高久田)
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