企業コンプライアンス:契約書管理
契約書の管理を適切に実行していますか?多くの方からは「はい」、という回答が返ってくると思います。では、どのような管理をしていますか?と聞いた場合、途端に自信を持って答えられる人は減るのではないでしょうか?
契約書は、契約締結時に作成される当該契約の内容を表示する文書です。日本法上は、契約書を作成しなくても当事者間で口頭による合意があれば契約が成立することがほとんどです。とは言っても、口頭による契約では、後日、言った言わないで揉めることが想定されますし、何より契約が成立したことを証明できません。そこで、互いの認識に齟齬が無いことを確認するために契約書を作成し、後の紛争の防止に備える必要があります。また、後々紛争になった場合、原本が必要になります。
では、そんな契約書の管理には何が必要なのか、大まかに説明したいと思います。
事業規模や契約件数の多さによって異なりますが、管理すべきは大きく3つです。
①原本(紙媒体、書類)・・・署名・捺印のされた契約書そのもの
②契約条件・・・契約形態(売買、業務委託、NDA、基本契約など)、契約期間など
③管理主体・・・主管部(管理に責任を持つ組織)はどこなのか
原本については、その契約の内容と存在を証明する重要な書類となりますので、鍵付きのキャビネットなどへ保管し、紛失を防止することが大切です。
また、契約と一言に言っても、基本契約から個別契約、業務委託契約、NDAなど様々な形式があり、それらが自社ひな形のものであるのか、イレギュラーなものなのか、など多数の類型が存在しますので、契約条件をわざわざ原本を見なくてもわかるようにしておく必要があります。エクセルや台帳などで一覧化しておくと管理しやすいと思います。
さらに、組織が小規模であればいいのですが、組織が大きくなるにつれ、その契約をどこの組織が管理するのかが重要となります。ビジネス現場でこそ契約内容の熟知が必要と考え営業部門に管理させるのか、法務の専任組織に管理させ、法的リスクの低減に努めるのか、など、方針によって異なりますが、責任の所在を明らかにしておく必要があります。
特に営業部門に管理を委ねる場合、法務部門がどのように法的リスクをコントロールするか決まり事を作っておかないと、締結後は法務部門が関知できないことにもなり兼ねません。
契約書は権利・義務を証憑する書類です。作成することが目的ではなく、リスクを管理するために作成するものです。契約書の管理ルールや法的リスクを考える際は、外部の法の専門家に相談することは非常に有用です。また、ネットにある雛形を利用しているという会社を多くみかけますが、落とし穴が多いのもまた事実です。転ばぬ先の杖として、是非法律の専門家をご活用ください。
(担当:萩生田)
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