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2017.10.20TOPICS

【判例コラム】花押を書いても遺言は成立しません

判例コラム:いわゆる花押を書くことは、遺言の押印の要件を満たさない。


(最高裁判所第二小法廷判決 平成28 年6 月3 日)



皆さんは花押と聞いて何を思い浮かべますか。まったく思い浮かばない方や戦国大名が書くサインでしょ、という方もいるかもしれません。花押とは、自署のかわりに書く記号で印判(いわゆるハンコ)と区別して書判(かきはん)ともいいます。歴史的には、印章と同様に文書に証拠力を与えるために使われていたもので、戦国大名が用いていたことが有名 です。デザイン性の高いサインをイメージしてもらえればいいかと思います。


今回、花押が民法968条1項の押印に当たるかの判断を最高裁がしましたので、ご紹介しようと思います。



【事例】


Aは、「家督及び財産はXを家督相続人としてa家を継承させる。」という記載を含む全文、日付及び氏名を自署し、その名前の下にいわゆる花押を書いたが、印章による押印の無い遺言書を作成した。


そこで、Xと他の相続人との間で、Aの遺言書が有効かが争点となった。



【民法968条第1項】(自筆証書遺言)


自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。



結論は表題の通りで「いわゆる花押を書くことは、民法968条1項の押印の要件を   満たさない。」となります。最高裁は、自筆証書遺言に押印が必要である趣旨は、遺言の  全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保することにあるとした上で、 我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い、と判断しました。


裁判中でも引用されておりますが、似たような事案で【指印】について最高裁が判断したものがあります(最高裁判所第一小法廷判決 昭和62年2月16日)。同様の理論構成を採った上で、こちらは、指印は自筆証書遺言の押印の要件を満たすと判断しました。


指印の再現性の高さ(何度押しても同じ指紋を再現できる)や、印章による押印に代えて指印によって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するか否かとの点が判断を分けたと思われますが、花押の効力について判断を示したものとして興味深い判決といえます。


(担当:萩生田)

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