TOPICS / CASE お知らせ・事例

2020.06.10TOPICS

【民法改正ナビ】民法(債権関係)改正のポイント

民法は、生活の基本となる法律ですが、制定された後、この債権関係の規定について約120年間ほとんど改正されておりませんでした。この120年の間に、情勢は大きく変動し時代遅れものになってしまったことや、判例や解釈が実務として定着しているが明文化されていない重要なルールが多数あることを鑑みて、民法債権関係の規定の見直しがされたものです。


【改正の内容】~社会情勢への対応と国民に分かりやすい民法へ~


(1) 消滅時効(2020年4月1日施行)


消滅時効とは、自分の権利を行使しないまま一定期間が経過した場合は、その権利が消滅する制度です。


なぜせっかく生じている権利を一定期間の経過をもって消滅させるのかというと、その理由は主に2つあります。


①権利を行使せずに放置している者を保護する必要がないということ。


②期間の経過により証拠が失われ、自分の正当な事実関係の証明ができなくなる者を救済し、法律関係の安定をはかること。


この2つが根拠だとされています。


=改正ポイント=


これまでの民法では、債権の種類ごとに短期の消滅時効が異なっていました。債権ごとにどの時効期間かを判別するのが煩雑でわかりづらいことや、短期消滅時効の期間が分かれている合理的理由が乏しいことから、原則として「知った時から5年」に統一されました。(>消滅時効)


(2) 法定利率(2020年4月1日施行)


法定利率とは、法律で定められた利率のことです。改正前民法では、民事においては年5%で制定当時の市井の金利を反映したものでした。商行為によって生じた債務に適用される利率は、年6%と規定されており、民事の年5%を前提として規定されていました。


=改正のポイント=


双方の合意に基づいて設定される利率を約定利率といい、原則として約定利率の設定がある場合には、約定利率によります。


この約定利率が規定されていない場合に、利息や損害金の算定で必要とされるのが法定利率です。この法定利率が、明治期に制定されて以来見直されてこなかったため、現在の経済感覚から大きく乖離していることから見直されることとなりました。


法定利率は、年5%から年3%に引き下げました。また、商行為により生じた債務についても年3%を適用することとなりました。(>法定利率)


(3) 保証(2020年3月1日施行)


保証とは、相手方に債務を負った者が、債務の支払いをしない場合に、その人に代わって支払いをする義務のことをいいます。


通常の保証は、契約時において金額が決まっており、対象が特定されています(例:住宅ローンの保証)。


通常の保証とは異なり、将来発生する不特定の債務の保証のことを根保証といい、継続的事業融資の保証等のことです。


=改正のポイント=


改正前民法では、極度額(債務の弁済上限額)の定めが義務づけられていなかった根保証に対しても義務付けがなされました。貸金等債務以外でも保証額が高額となるケースが少なくないことをうけての改正となりました。


また、公正証書作成義務など、保証人の保護のさらなる各種拡充が図られております。(>保証)


(4) 約款(平成30年4月1日から施行日前に反対の意思表示をすれば、改正後の民法を適用しない。)


約款とは、大量の同じ種類の取引を効率的に行う等を目的として作成されている定型的な内容の取引条項のことをいいます。ご覧になる機会が多いものですと、保険の保険約款がございます。


=改正のポイント=


これまでは定型約款に関して、民法の法律がなく、判例の集積により判断がなされてきました。今回の改正で約款についてのルールが新設されました。


今回の改正では、定型約款の中の規定がどういった場合に契約内容となるか等の基本的なルールを定めました。利用者の利益を一方的に害するような不利な規定については契約内容と認められないということが明確化されました。(>約款)


(5) 意思能力(2020年4月1日施行)


意思能力制度とは、自分の行為の結果や意味を判断するに足りない精神能力の者がした法律行為は無効となることです。意思能力の無い者とは重度の認知症等を患い行為の結果を判断できなくなってしまった方等がそれにあたり、高齢化社会が進んでいる現状においては今後一層重要となってきます。


=改正のポイント=


判例上認められていて、実務においても活用されておりますが、民法に直接の明文の規定がなかったため、意思能力がない者がした行為は無効となることが明文化されました。(>意思能力)



(6) 債権譲渡(2020年4月1日施行)


債権者と債務者間にある債権を売買により第三者に売却することを債権譲渡といいます。


昨今、特に中小企業では債権譲渡を資金調達の方法として広く取り入れるところが増えてきています。例えば、3か月後に入金予定の報酬(売掛債権)を、第三者に廉価で売却し、3か月待たずに資金調達をする方法です。買い受けた方は、3ヶ月待つことにより、債権を取得した金額より高額の弁済を受けることができるというメリットがあります。


=改正のポイント=


改正前民法に規定されている債権の譲渡制限特約が資金調達の弊害となっていることから、譲渡制限特約の効力が見直され、譲渡制限特約が付されていても債権譲渡の効力は妨げられないこととなりました。また、将来発生する債権を譲渡できる旨の規定がなかったことから将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定が設定されました。(>債権譲渡)



以上、債権関係の民法改正について概要をお伝えいたしました。主な改正事項で申し上げればまだまだございますが、随時ご紹介させていただきます。


今回の改正は、契約関係をはじめとして消滅時効、保証、債権譲渡など範囲が広くなっており、制度を大きく変更する内容や新設が多分にあります。ご自身の権利を保護するためにも、気になることがございましたら是非お気軽にお問合せください。


(担当:弁護士萩生田)

  • CONTACTお問い合わせ

    NEXTi法律会計事務所は、法務及び会計・税務に関する総合的なアドバイスをワンストップにてご提供いたします。

Pagetop