自筆証書遺言とは?自筆証書遺言の作成手順と遺言書の書き方を徹底解説
今回は、「自筆証書遺言」について解説します。
自筆証書遺言とは、自筆証書遺言を書くときのルール、自筆証書遺言の作成手順、自筆証書遺言の書き方など、自筆証書遺言によって遺言書を書くのに必要なことを網羅的に解説します。
自筆証書遺言とは
「自筆証明遺言」とは、遺言方法の1つで、本人の自筆で作成する方式のことをいいます。
自ら作成するため、遺言の内容や存在を誰にも明かさず秘密にすることができ、費用もかからないので、手軽さで選ぶならこれがおすすめです。
一方で、「公正証書遺言」とは異なり、誰かが内容をチェックしてくれるわけでもないので、記入漏れや文字が読めない等の理由から、法的に有効な遺言として認められないケースも多発しています。
そのため、実際に遺言書を作成する際には、正しい遺言の書き方を学び、注意しながら慎重に書くことが大事です。
自分だけで遺言を書くのが不安な場合は、弁護士などのアドバイスを受けながら、作成すると良いでしょう。
自筆証書遺言の書き方の3つのルールとポイント
自筆証書遺言には、必ず守らなければならない3つのルールがあります。
全ての要件を満たしていなければ、法的に有効な遺言として認められません。
書き方のルールは、以下の通りです。
- 全文を自筆で書くこと
- 日付・氏名を記入すること
- 押印すること
それぞれについて、詳しくご説明します。
全文を自筆で書くこと
自筆証書遺言は、全文を自筆で書く必要があります。
パソコンやワープロで書かれたものは自筆でないため、認められません。
ICレコーダーで録音したもの、ビデオで録画したものも無効です。
筆記用具に制限はありませんが、改ざん防止のためにも、ボールペンやサインペン、筆や万年筆など、文字が消えないものを選びましょう。
用紙のサイズも自由ですが、A4・B5などがよく使われます。
ただし、印刷された文字は無効であるため、真っ新な紙にカーボン紙を用いて複写することで作成するのが理想的です。
書き方は、縦書き・横書きどちらでも構いません。
財産目録はパソコン・ワープロでの作成が可能
2019年の法改正によって、財産目録はパソコン・ワープロでの作成も認められるようになりました。
また、財産目録を作成する代わりに、現預金の通帳口座のコピーを添付、不動産の登記事項証明書を添付する方法も利用できることとなりました。
上記のような方法で作成した財産目録には、自署による署名・押印が必要です。
日付・氏名を記入すること
日付・氏名を自筆で記入する必要があります。
作成した年月日が特定できない表現は認められません。
押印すること
作成した自筆証書遺言には、押印が必要です。
認印でも可能ですが、実印が望ましいとされています。
自筆証書遺言の作成手順
以下の作成手順で、自筆証書遺言を作成していきましょう。
- 自分全ての財産(不動産、預貯金、国際、株など)をリストアップする
- 相続させたい人・団体をリストアップする
- 相続財産を明確にする
- 用紙、筆記用具、印鑑、封筒を用意する
- 下書きをして読み返す
- 漏れがなければ、正式な遺言を書く
まずは、自分の全ての財産をリストアップしましょう。
財産には、プラスの財産(不動産、預貯金、国債、株など)とマイナスの財産(借金、住宅ローン)があります。
次に、相続させたい人や団体をリストアップします。
相続させたい人は、自分が亡くなった時の推定相続人以外からも選ぶことができます。
遺留分を侵害しないように注意しながら、誰に何を相続させるか考えましょう。
財産のリストアップと相続させたい人のリストアップが済んだら、相続財産を明確にしましょう。
不動産であれば、登記簿謄本(登記事項証明書)で土地の地番や家屋番号、面積を。
預貯金であれば、銀行通帳で銀行・支店名、口座番号を確認してまとめるなどしてください。
ここまで済んだら、実際に書く準備を始めます。
用紙、筆記用具、印鑑、封筒を用意し、下書きから始めます。
内容等に漏れがなければ正式な遺言を書いていきましょう。
自筆証書遺言の書き方
法務省が公式に出している、「自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例の参考資料」を元に、自筆証書遺言の書き方と注意点をご説明します。
http://www.moj.go.jp/content/001279213.pdf
http://www.moj.go.jp/content/001279214.pdf
タイトルを書く
まずは、タイトルを書きます。
タイトルは「遺言書」「遺言状」がいいでしょう。
タイトルはなくても大丈夫ですが、書くのが一般的です。
相続させたい人と相続させたい財産を書く
次に、自分が相続させたい相手と、その人に相続させたい財産を記載します。
相続させたい相手が簡単に特定できる場合は、生年月日だけでも構いません。(生年月日も必ずしも書く必要はありません)
法定相続人以外の場合は、生年月日の他に、本籍や住所も記載して特定できるようにしましょう。
相続させたい財産は、その情報を直接遺言書に書くか、別子目録に詳細は書いて「私の所有する別紙目録第1記載の不動産を、〇〇に相続させる。」と書けば良いでしょう。
遺言執行者を指定する
相続させたい人と財産の指定が終わったら、遺言執行者を指定します。
日付・氏名を書いて押印する
最後に、作成日と住所、氏名を書いて、押印すれば、自筆証書遺言が完成します。
封筒の書き方
封筒には、「遺言書在中」のように遺言がわかるタイトルを表面に書きます。
裏面には、遺言を書いた日付と遺言者の氏名を書き、押印します。
また、使用する封筒に応じて封かんし、改ざん・偽造防止のため、封筒のつなぎ目に封印します。
封印は署名したものと印鑑を使用してください。
訂正方法・削除方法
訂正・削除するときは、文字の上から線を引き、押印します。この時、原文が判読できるようにしてください。
訂正の場合はその側に訂正する内容を書きます。
最後に、訂正・削除した行・文字数・内容を、作成日と署名日の後に続く形で記載し署名します。
まとめ
「自筆証書遺言」とは、本人の自筆で作成する方式のこと
全文を自筆で書くこと、日付・氏名を記入すること、押印することを忘れずに
まずは下書きから始めること
いかがでしたか?
遺言書には、書き方に様々なルールがあり、一つでも抜けや間違いがあると、その遺言書は正式な遺言として認められないことも多くあります。遺言に込めた大切な想いがしっかりと相続に反映されるよう、自筆証書遺言で遺言書を作成する場合には、専門家に相談することをおすすめします。
今回の記事が、皆様のお役にたてれば、幸いです。