公正証書遺言の作成手順・費用・必要書類は何?知っておくべきポイントを徹底解説


今回は、「公正証書遺言」について解説します。

公正証書遺言とは、公正証書遺言の作成手順、公正証書遺言の費用・手数料、必要書類、弁護士に依頼するメリットなど、公正証書遺言を検討する際には絶対に知っておきたいポイントを徹底解説します。

 

公正証書遺言とは

「公正証書遺言」とは、遺言方法の1つで、公正役場で公証人に作成してもらう方式のことをいいます。

 

本人が自筆で作る「自筆証書遺言」とは異なり、公証人が作成するので、記述ミスで遺言が無効になるようなことはほとんどありません。また、完成した公正証書遺言の原本は、公正役場に20年間保管されるので、紛失の恐れもありません。

確実に遺言を残したい場合や、自分で作成するのが困難な場合によく利用される、おすすめの遺言方法です。

 

遺言方法には、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の他に、「秘密証書遺言」がありますが、これは手間と費用のわりにメリットがあまりないため、利用されることはほとんどありません。

 

公正証書遺言の作成ポイントと手順

公正証書遺言は以下の手順で作成します。

 

  1. 遺言の原案を作る
  2. 必要書類を用意する
  3. 証人を依頼する
  4. 公証人と打ち合わせをする
  5. 遺言の文案をチェックする
  6. 証人と一緒に公証役場へ行く
  7. 公正証書遺言が完成する

 

まずは、遺言の原案を作ります。

誰にどの遺産をどれだけ譲りたいか、相続させたくない相手はいるか、遺言の執行は誰に任せたいか、など遺言にしたいことを箇条書きで構わないのでメモにまとめます。

 

遺言の内容が決まれば、公正証書遺言を作成するための必要な書類を揃えます。

必要書類には、遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本、相続人以外に遺贈する場合には、その相手の住民票などが必要になります。

 

必要書類を用意したら、証人を探します。

公正証書遺言の作成には、証人2人が必要になります。証人は誰でもいいというわけではありません。

未成年、相続についての利害関係者、公証人の関係者は証人になることができません。

見つからなければ、公正役場で証人の依頼をすることも可能です。

 

証人が見つかれば、いよいよ公証人との打ち合わせに入ります。

交渉役場に出向くか、電話やファックスなどでも打ち合わせすることもできます。

また、実際に公証人に自宅まで来てもらうこともできます。その際は出張費用などがかかります。

公証人との打ち合わせから文案の完成まで、大体2週間から1ヶ月ほどの余裕は見ておきましょう。

 

公証人との打ち合わせ後、完成した文案が届いたら、自身で内容をチェックしましょう。

追加したいことがあれば、公証人に連絡をとります。

 

最後に、公正証書遺言を作成するため、証人2人と一緒に公証役場へ行きます。

 

遺言者本人が遺言内容を口述して、それを公証人が文書にします。

次に、筆記した文書を公証人が読み上げ、遺言者と証人がそれを確認し、間違いがなければ署名・押印します。

最後に公証人が署名・押印をすれば、公正証書遺言が完成します。

 

完成した公正証書遺言の原本は公正役場にで保管され、正本と謄本は遺言者に渡されます。

 

公正証書遺言にかかる費用は3つ

公正証書遺言は、作成を公証人に任せるため、以下の費用がかかります。

 

  • 公正証書遺言作成手数料
  • 証人2人に支払う日当
  • 公証人の出張費用・交通費(公証役場以外で作成する場合)

 

それぞれ見ていきましょう。

 

公正証書遺言作成手数料

公証役場で公正証書遺言を作成するには手数料がかかります。

作成手数料は財産の額に応じて決められており、相続人・受遺贈者(遺贈を受ける人)ごとに算出して合計します。

 

公正証書遺言作の作成手数料以下の通りです。

 

財産の価格 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円
1億円超 3億円まで 43,000円に、5,000万円ごとに13,000円を加算
3億円超 10億円まで 95,000円に、5,000万円ごとに11,000円を加算
10億円超 24万9,000円に、5,000万円ごとに8,000円を加算

 

これに、遺言する財産の総額が1億円以下の場合は、11,000円加算されます。

 

例えば、長男に6,000万円、次男に2,000万円相続させる意思を公正証書遺言で残す場合、

6,000万円に対する手数料は43,000円、2,000万円に対する手数料は23,000円、遺言する財産の総額が8,000万円で1億円以下なので11,000円。合計77,000円の公正証書遺言作成手数料がかかります。

 

また、公証人に家や病院に来てもらう場合は、通常の手数料の1.5倍の費用と、日当・交通費が別途かかります。

 

証人に支払う日当

証人を自ら用意できなかった場合は、公正役場で紹介してもらうことが可能です。

その際には、証人1人につき、6,000円程度の日当がかかります。

 

証人は2人必要なので、2人紹介してもらう場合は12,000円、

1人は自ら用意し、1人だけ紹介してもらう場合は、6,000円ほどの費用がかかります。

 

公証人の出張費用・交通費

公証人に家や病院に来てもらう場合は、公正証書作成手数料とは別に、出張費用・交通費がかかります。

出張費用は、日当2万円(4時間まで1万円)です。

 

公正証書遺言の作成サポートを弁護士に依頼するメリットと費用

公証人は、公正証書遺言を作成してくれはしますが、業務的なことだけで、遺言の内容に対して適切なアドバイスはしてくれません。

誰にどの遺産を相続させるかなどは、自身だけで考える必要があり、内容によっては遺言が家族の亀裂を生む原因になることもあります。

 

そのため、遺言の作成は弁護士、司法書士などの専門家に相談しながら書くと良いでしょう。

法的トラブルへの対処や、遺言内容の正確性の担保、相続財産の調査など、自身にあった遺言の作成を、幅広くサポートしてくれます。

 

遺言の作成費用の相場は、10万円~20万円程度ですが、遺言内容や財産状況によって変動する可能性があります。

相談は無料で行っている弁護士も多くいるので、その都度確認しましょう。

 

公正証書遺言の必要書類

最後に、公正証書遺言の必要書類を紹介します。

 

必要書類は以下の通りです。

 

  • 遺言作成者本人の印鑑証明書
  • 遺言作成者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
  • 相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票
  • 不動産の場合は登記事項証明書と固定資産税の課税明細書
  • 遺言作成者が証人を選任した場合は証人の名前、住所、生年月日及び職業をメモしたもの

 

また、日本公証人連合会のホームページにも、必要な書類が記載されているので、そちらも確認すると良いでしょう。

http://www.koshonin.gr.jp/business/b01

 

まとめ

  • 「公正証書遺言」とは、公正役場で公証人に作成してもらう方法のこと
  • 公証役場で公正証書遺言を作成するには手数料がかかる
  • 公証人は遺言の作成だけで内容に対しては相談にのってくれない
  • 遺言の作成は弁護士に相談すると適切なアドバイスがもらえる

 

いかがでしたか?

公正証書遺言は、確実に有効な遺言を残すことができるので、よく選ばれている遺言方法の1つです。費用はかかりますが、それに相応したメリットがあります。

 

今回の記事が、皆様のお役にたてれば、幸いです。